たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

「構わん。やり方を教えろ」

そう言われたら従うしかない。

「.....は、はい」


コンラートさんに見つかったら怒られちゃう。内心冷や冷やしながら、ジークムントに教わったことをそのまま彼に伝える。


すると黙々と作業にかかるエルンストにフィーアは目を丸くしてしまった。

この方は大半の貴族が嫌がる作業を平気でなさるの?


フィーアが幸せだった頃も、ほとんどの貴族が『庭仕事は手が汚れる』とか、『下働きなど下僕のする事』と言って庭仕事を嫌がった。


きっとご主人様のお母様が素晴らしい方で、こだわりなく庭仕事をされていたからなのね。口元が緩む。



エルンストの細く長い指は、器用にユリを剪定していく。


「ん?どうした?お前もさっさとやれ」


うっかりエルンストの美しい所作にみとれていたフィーアは、赤くなったほほを隠すように彼から離れたところにしゃがみ込むと、作業を始めた。

この場に宮廷の美女たちがいたら、フィーアと同じように顔を赤らめて、エルンストの作業を見守っていたに違いない。


しばらくして、「おい、これはどうしたらいい?」エルンストは一枚の葉を指さした。

黒地に赤い斑点がある毛虫がゴソゴソと体を動かしている。


「こうするのです」

おもむろに葉に手を伸ばし、プチっとひねり茎から切り離すとそれを地面に落としフィーアは踏みつけた。


「....お前、案外残酷だな」


ためらいなく毛虫を踏みつぶしたフィーアに少し驚いた様子だ。


「害虫はきちんと駆除しないと、花がダメになってしまいます」


「....ああ、わかった」

戦で敵を倒すことにはためらいがないのに、たかが毛虫を踏んづけた位で驚くなど我ながらおかしな話だ。
だが、あんな可愛い顔をしてためらいなく毛虫を駆除するフィーアに意外性を感じたエルンストはひとり肩をすくめた。