たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

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青年将校は馬番のカールに馬をあずけると、女を自分の体の前で抱きかかえて屋敷の玄関へと向かう。

相変わらず意識はないようだ。


「お帰りなさいませご主人様。辺境の視察はいかがでしたか?」


うやうやしく出迎えたのはこの家の執事長、コンラートだ。

執事長の証である燕尾服をきちんと着こなし、手を胸にあて頭を下げる。


と、ここまではいつもの事なのだか、今日は違っていた。


「ご、ご主人様っー?!」


白髪が目立ち始めた今年60歳になるコンラートは執事の経験が長いこともあり、多少の事では動じないはずだが、驚きとも奇声ともとれる声をあげてしまった。


無理もなかった。

目の前には明らかに奴隷と分かる女を抱きかかえた主人が立っているのだから。


「ど、ど、どうなさったのですか?汚物を抱えられて?」