たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

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馬の手綱を持つフィーアの心は何故か浮かなかった。


酔っ払いと剣を交えた時もそうだったけれど、ご主人様は人前だと私の存在を無視される。

とるに足らない存在....なのだろうか?

あくまで侍女に対する対応なのだろうか?

それに仕事中と言われればそれまでだ。



奴隷は家畜以下。そんな私を侍女として迎えてくれているだけで感謝しなくてはいけない。


頭では分かってる、分かってるけど.....苦しくなる。

フィーアは込みあげてくる切ない感情を抑えるように胸の前でキュッと手を握る。

奴隷になる前の身分を隠しておきたいのに、気づいて欲しい矛盾。



.....私どうかしてる。


ご主人様は名門ベーゼンドルフ侯爵家の当主。皇帝の覚えもめでたく、ますます発展してゆかれる方。

いずれ、上級貴族の女性と結婚されるだろう。


私は....。

私は侍女として彼とその妻になった人お側に仕えていくのだろう。きっと。


拾われただけで幸せではないの?
それ以上の幸せを望んではいけないのに、私は欲を出してしまいそうになる。



フィーアは馬の背に揺られながら、心の葛藤を殺すのに必死だった。