たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

「ファーレンハイト!我が家の侍女を誘惑するのは遠慮してもらおう」

二人の会話に突然エルンストが割って入る。


「失礼いたしました」


ファーレンハイトと呼ばれた青年将校は肩をすくめる。


「ではフロイライン、駒寄までお送りしましょう」


フィーアの腰に軽く手を添えて、きびすを返そうとしたファーレンハイトとフィーアに、「独りで帰れるなっ?!!」イライラしたエルンストの声が浴びせられた。


急に怒鳴られて、フィーアはその大きなグレーの瞳を見開いてビックリした顔をした。

「は、はい。大丈夫です」

エルンストに答えファーレンハイトに案内を丁重に断ると、二人に軽くおじきをして執務室を後にした。



ファーレンハイトが扉を閉まったのを確認すると、

「ちょっと冷たいのではありませんか?」

エルンストに苦言を呈する。


「お前にとやかく言われる筋合いはない」


「相変わらずですね。私だったら、あんな美しい女性に冷たくはしませんよ」

フィーアの居なくなった空間を見つめる。


「女ったらしのお前らしいな」

書類にサインする手を休めずエルンストは言った。