たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

青年は気色ばむと、

「ではやはり最初の娘にしよう」

そう言って、話はこれで終わりとばかりに顔の前で苦々しく手を払った。


「将校様っ!!」引き下がらない女を無視して、「おい、早くしろ」商人の男を促した。


金貨を胸元にしまい込むと男は奴隷女を縛っていた縄を解くと腰の鎖の鍵を外した。


「さあ、今日からこの方がお前の新しいご主人様だ。せいぜい可愛がってもらえ」


地面に横たわる女に一瞥をくれると、再びムチを振るった。


「さあお前ら、休憩は終わりだっ!
この女みたいに立派なご主人様に買ってもらえるように頑張るんだぜ」



もはや無気力と化した奴隷たちはゆっくりと立ち上がると、ノロノロと歩き出した。

選ばれなかった奴隷女は「地獄に落ちやがれーっ!!」恨めしそうに青年を見ながらいつまでも叫び声をあたりにまき散らしていた。


青年はそれを見送ると、足元に転がる女に視線を移した。


「さて?どうしたものか」


しばらく思案していたが、「起きれるか?」
女を抱え起こして問うてみたが返事はなく、その瞳も閉じられたままだ。


水筒を女の口元にあて、唇を湿らせてみた。


「....う.....っく」


わずかに動く唇。
更に水を流し込むと、ゴクリと喉が上下した。

その後は意識を失ったのか、ガックリと首を落とした。


「やれやれ、コンラートへの言い訳を考えなくてはな」


深いため息をひとつ漏らすと、荷物を載せるように女を少し乱暴に馬に乗せ、自分もまたがり帰路へとついた。