カチッカチッ

何度引き金を引いても玉は出なかった。香が残りを抜いていたのだ。

「殺したいって言い出したのは私だけどさ、やっぱり殺すのはいけないよ。そう思った」

「だから玉を抜いたのか?」

「うん。ヒビちゃんが人殺しにならないように。やっぱりダメだよ。そんな復讐したってお母さん喜ばないよ」

「そうかな」

響は銃口を下げた。

「昔から思ってたよ。ヒビちゃんがこいつ殺すんじゃないかって」

「昔?いつからだ?」

「犯人の写真見せてくれた時。ヒビちゃん震えてた。何かに堪えてるんだと思ったよ。もどかしい思いを我慢してるっていうか。何か決意めいたものも感じたしね」

「あの時そこまで見抜いていたのか?凄いな。写真を見せただけで。それに『その写真初めて見た』ってリアクションは演技だったんだな」

「うん、だってその写真、私に廻ってきたものだもん」

「え?」

「マスコミにあの写真が廻ってきたんだよ。でも警察も動けない状態だから公表はしないって上の人が」

「そうなのか。じゃあロンソンの吉田さんに写真を渡したのは…」

「私。でさ、苗字も山崎だしさ、ピンとくるじゃん」

「こいつが道で私とぶつかった時、実はあれ?って思ったんだ。どこかで見た顔だなって。その時はあばらが痛くてそんなこと忘れちゃったけど」

村岡がジャックダニエルを飲みながら口を開く。

「今回はな、響本気やぞと。止めるしかないと。でもできることなら気がすむまでやらせてやりたいと」

「それでここまで協力してくださったんですか」

「でも、これで終わりや、足2発撃って自白させて。もう充分やろ。後は警察とマスコミに任せようや。もちろん今も録っとるで」

ポケットからボイスレコーダーを出す。

「でもそんなことしたら俺たちも罰せられます。香なんて銃まで撃ってる」

「ばれんかったらえーやん。俺らは顔知られたわけやないし、ここがどこかも誰も知らんねんから」

「私が警察に録音データ全部警察に送るよ。それで執筆をライターに頼む」

「そうか。ありがとう。じゃー香が危ない目に合わないように、組にも連絡が取れないように」

そう言って響は

「ガシャーン!」

「パリーン!」

と荻野のiPadとスマホを叩きつけた。


「俺はこいつ車で山連れてって適当なとこで下ろす。それで。しまいや。」