時は現在。
響は村岡と香をジッポに集めた。
「例の写真の男を追い詰めることにします。力を貸して下さい」

「なんでや?写真まで持ち歩いてそんなに恨みあるんか?」

「学生の頃ずっといじめにあってまして。今でも許せないんですよね。そんな男がこの街にいた」

我ながらチープな嘘だ。だが母を殺した犯人と言ってしまうと二人が遊びのノリで手伝ってはくれないように思う。だからそこは隠しておく。

「そーなんだー。どんなことされたの?」

「放課後殴られたり、手錠をつけて失禁するまで放置されたり」

「ひどいね!でもヒビちゃん強いんじゃないの?」

「ガタイが違う。あいつは強すぎるんだよ」

「俺よりでかいゆーたもんな。でもそんなもん俺が投げ飛ばしたんで」

「いざとなったらお願いします」

「で、何をすれば、えーんや?」

「あの男はカシワギタクミというんですが、そのカシワギを尾行してほしいんです」

「それは俺の得意分野やけど、どこにおるか分かるんかいや?」

「吉田さんに聞いたんです。カシワギが出入りしてる店を」

「ほんまか。じゃーやったるわ」

「私は何したらいいの?私もあばら折られてるからさー、とっちめてやりたいんだ!」

「香の出番はまだ後だ。物事には順序がある」

「つまんなーい!まーでもヒビちゃんがそう言うなら待つよ。私の出番はカシワギの家を突き止めてからってことね」

「そうだ」

「ほんでカシワギが出入りしてる店ってどこや?」

「5番街の『コンロ』です」

「あの店かいな。入ったことないけど場所はわかるわ」

「いつ来るか分かんないんですけど村さん張り込んでもらえませんか?」

「道に車入れられへんから張り込みは難しいなー。ずっと立ってる訳にもいかんし。怪しいやろ?」

「そうですよね。でもそこをなんとか」

「俺が通うわ。コンロに」

「おお!それはいいですね。お願いしてもいいですか?」

「ほんまはめっちゃ金取るとこやけど、ヒビちゃんのお願いやったらしゃーないな。飲み代だけ出してや」

「わかりました。金は無駄にあるんで」