アジト「ジッポ」に戻った3人は満足げに話す。響はいつもの髭面、三つ編み、ヒビ割れメイクに戻っている。

「香、俺迫力あったやろ?」

誇らしげに村岡が言う。

「あったねー!あいつすげービビってたよ!」

「人は2つ以上のことを同時に考えることはできない。めんどくさい問い合わせと、強面のクレームが同時に来ると、もう他のことは考えられなくなる」

響はいつでも論理的な言葉を吐く。

「ヒビちゃんはなんて電話したのー?」

「宅急便の荷物を取りに来てくれないか?って」

「あはは!なにそれ?コンビニの仕事じゃないでしょ」

「そうだな。想定外の電話が一番いいと思ってさ」

「想定外すぎるよ」

「でも今回一番頑張ったのは香やな。なんせ実行犯やからな」

「なによその言い方?共犯でしょ?共犯」

「せやな。俺も前科持ちかー。あ、捕まってへんからまだ前科とは言わんか。ほんでヒビちゃんは前科何犯や?」

「俺ですか?…忘れました」

何十回もありますとは言わない。二人は仲間ではあるが全てを話す気はない。

「何回も悪さしてるんちゃうか?涼しい顔して」

ニヤニヤしながら村岡が言う。響は笑って誤魔化す。

「ほんでや。香、何盗んでん?」

「そうだよ。それが本題だ」

「うーん、これ面白いのかなー?」

香は鞄からビニール袋を取り出す。

何かぬるっとした物が入っている。

「これ、なんや?」

「…ちくわ」

!!二人は口を開ける。
そして大爆笑。

「ちくわてお前!おでんのかいや?」

「そう、おでんの。熱かったー!」

「熱かったて、トングは使わへんかったんか?」

「そんな暇ないじゃん」

「素手でおでんのちくわを?」

「うん。素手でおでんのちくわを」

響は頷きながら言った。

「百点」