漆黒が隠す涙の雫


驚いたように見開かれる大きなまん丸の目。


小さく整った鼻に、血色の良い唇。


新と同じ色の…だけど艶のある黒髪をなびかせ立っているその姿は、俺が予想していた悲愴な雰囲気とはまるで違っていて、生気に満ちた、曇り一つない澄んだ瞳をしていた。


その華奢な肩に沢山の辛い過去を背負ってるにも関わらず、どうしてそんな瞳でいられるんだろう?


気が付いたら俺は、愛華のその瞳を覗き込むように、彼女の前に立っていたんだ。



『あんたが新(あらた)の妹?

へぇ。思ったより似てないね』



『……そう…ですか?』



愛華の綺麗な瞳が俺を写した時、俺は新がこの子をあんなにも可愛がるわけが、分かったような気がした。


この瞳を曇らせる恐れのある、あらゆるものからこの子を守りたい。


例え誰であろうと、どんな手段を使おうとも、守るべきものがあるんだと、この時俺は始めて知ったんだ。


きっと、俺が彼女に触れられるのは、この想いが、愛華が唯一心を許せる存在の新と同じものだったからだと思う。


愛華にとって害のない存在であると…むしろ、愛華を守るための存在であると、愛華の本能が悟ったんだろう。




だから、分かるよ新。


新が、愛華を傷付けた“菅野武”という男を許せない気持ち。