漆黒が隠す涙の雫

何それ…。


何やってるのよ。お兄ちゃん。


「でもさ、潤もまんざらじゃないみたいだったよな?」


「…え?」


「愛華ちゃんの話を聞いてる時の潤な、いつも見せた事もないような柔らかい顔で笑ってたんだ」


修二さんのその言葉で、思い出したのは潤くんと初めて会ったあの日の笑顔。


あの笑顔は、どうでもいいものに向けられるようなものじゃない。


あの笑顔は––––。



胸がトクンと甘い音を立てる。



「新の話を聞いてる内に、潤もだんだんと愛華ちゃんに情が移っていったんだと思うよ。会ったのはたった一度かもしれない。だけど、潤の中で愛華ちゃんは、新から話を聞いていた当時からずっとずっと“大切な子”なんだよ」


“大切な子”。


そう。潤くんのあの笑顔は、間違いなく“大切なもの”へ向けられる温かい笑みだった。


冷えきっていた心に、温かいものが流れ込んでくる。


“俺を信じられるの?”


そう言った潤くんの言葉に、今なら自信を持って返せる気がする。


潤くんは私の大嫌いな暴走族だ。


あの日、私に酷い事をしようとした“暴走族”だ。


私をこんな体にして、お兄ちゃんと離れ離れにした、憎い憎い暴走族だ。


だけど……。