その男は、おもむろにフルフェイスのヘルメットを外し、乱れた髪を直すように頭を振ると、私へと視線を向けた。
………う……わぁっ……!!
私は、思わず息を呑む。
色素の薄いふわふわした柔らかそうな髪。
整った輪郭にすらっとした高い鼻。
長い睫毛に隠れる、澄んだ茶色い瞳。
落とされたヘッドライトの中で、見た事もないくらい綺麗な男の人が妖艶なオーラを放っている。
その男は、跨っていたバイクから降りると、長い前髪を搔き上げながら一歩一歩私に歩み寄ってきた。
「……っ」
目が釘付けになって、彼から視線を外せない。
そのまま後ずさるように後退していく私。
何だろう?
前にもこんな事があった気がする……。
「…な…何ですか?」
私の前までやってくると、その男は、何も言わずに私の顔をじっと見つめてきて……。
私……やっぱりこの人を知ってる。
この瞳の色…どこかで見た事がある。
小さな記憶のカケラが、パズルのように繋がって、
私の記憶を呼び起こしていく。
–––––––
お兄ちゃんと住むアパートの前。
ヘッドライトの光を放ちながら、停車する2台のバイク。



