潤くんに手を引かれながら、私はお兄ちゃんを顧みる。


お兄ちゃんは、2階の手すりに手を掛け、何かと葛藤でもしているかのような表情で私達が出口へと向かうのを見ていた。



追いかけてきては…くれないんだ。



ぼんやりとそんな事を思う。



やっぱりもう、側にはいてくれないんだね。


もう、ふたりで笑い合ったあの頃には戻れないんだ……。


ひとりぼっちに…なっちゃった。


じわっと込み上げてくる涙。


堪えるように必死に唇を噛む。



–––––ギュ。



繋がれた手に、潤くんが力を込める。



“傷付く時は、ちゃんと俺の前で傷付いて”



潤くんの背中を追いかけながら、ズキズキと痛みを伴う胸に手を当て、ただただその言葉を思い出していた。