込み上げてくる涙を、喉の奥に力を込めて押し込める。
そして、精一杯口角を上げて……。
「お兄ちゃん。一緒に帰ろう?」
そう言って微笑んでみせた。
もう泣いたりしないから。
絶対に泣いたりしないから。
だからお願い。
側にいて。
お兄ちゃんの表情にみるみる影かかかっていく。
「……それは出来ない」
「何で…!!」
「愛華どうやってここに来た?何で、俺がここにいるって分かった?」
お兄ちゃんのものとは思えない冷たい目。
ここに来るまで、どこか半信半疑だった。
お兄ちゃんが暴走族の総長だなんて。
武くんの一件で、お兄ちゃんは私が暴走族というものをどれだけ嫌悪しているか知っているはずだったから。
潤くんや昴くんにお兄ちゃんがそうだと聞いても、どこか信じられないでいたんだ。
だけど……。
今、目の前にいるお兄ちゃんは紛れもなく暴走族の総長の出で立ちで……。
実感せざるを得なかった。
今まで私が見てきたお兄ちゃんこそ、偽物だったんだって。



