漆黒が隠す涙の雫


それすらも越える何かがお兄ちゃんをそうさせたのなら、一体それは…何?


やだな……。


確信に近い嫌な予感が、私の中で渦巻いてる。


だけど、頭の中でいくら考えたって仕方ない。


どんなに傷付く事になろうと、お兄ちゃんの口から聞くしか確かな答えは出ないんだから。



傷付く心の準備とは、


“ひとりぼっちになる心の準備”という事なのかな……。




答えに戸惑う私の頭に、潤くんがポンと手を乗せる。


「覚悟できてなくてもいいから、ひとつだけ約束して」


「…え?」


「傷付く時は、ちゃんと俺の前で傷付いて」


「……」


真っ直ぐな瞳を私に向ける潤くん。



それは…どういう意味?


まるで、“ひとりぼっちになんかしない”って言われてるみたいに聞こえるけど、それはあまりにも自分に都合良く考えすぎかな?


「返事は?」


「は、はいっ!」


「じゃあ、行くよ」


潤くんは私の手を取ると、ドアノブに手を掛けそれを開けた––––。





「おい。一体下は何の騒ぎだよ?」