お兄ちゃんは、知らせを聞いたのか直ぐに警察署に駆けつけてくれた。
私の腕の包帯を見るなり、眉をひそめて苦しそうな表情をしていた。
『お兄ちゃん…あのね…。武くん…暴走族に入ってるんだって!私を襲った人達も…暴走族の仲間だったらしいんだけど……今の時代、まだ暴走族とかあるんだねぇ!私、ビックリしちゃったよ!』
『愛華……』
『武くん、まだバイクの免許とか取れないのに、どうしてるんだろ?あぁ!あれかな?後ろ乗せてもらうとか…』
『愛華!!』
お兄ちゃんの腕の中に押し込められた私。
『笑わなくていいから……』
ずっと力が入ったままだった私の体から嘘のように力が抜けていく。
『愛華…ごめん。ごめんな。兄ちゃんのせいだ。兄ちゃんが迎えに行かなかったから……』
違う。
お兄ちゃんのせいなんかじゃない。
そう言いたかったのに、その時の私は言えなかった。
『お兄ちゃんの…ばか…。
何で…何ですぐに助けに来てくれなかったの?』
誰かのせいにしなきゃ、誰かも一緒に傷付いてくれなくちゃ、この恐怖に押し潰されてしまいそうで……。
思い出したくもないのに、ちらつく男達の顔に吐き気がして……。



