『なんかムカつくんだよ。お前。
養護施設とかいううざってぇ奴らの溜まり場の中で、いつもヘラヘラヘラヘラ。
笑うんじゃねぇ。泣けよ。ほら。ごめんなさいっつって泣け。喚け!』
目を血走らせて、口元に笑みを浮かべながらそうまくし立ててくる武君に悪寒がする。
この人…狂ってる。
怖い。
だけど、こんな人に屈服するくらいなら、死んだ方がましだ。
『……っ!泣かないよ!』
『あっそ。……じゃあ、やられちまえ』
*
『大事には至らなかったようなんですが、もしご心配なら、念の為病院に…』
『そうですか。わかりました。本当に…ありがとうございました』
テーブルに出された麦茶の中の氷を見つめながら、歳のいった婦人警官と施設長の話し声をどこか他人事のように聞いていた。
あの直後、私は無事保護された。
私が拐われるのを目撃していた近所の人が警察に通報をしてくれたらしく、大事に至る前に警察が駆けつけてくれたからだ。
正直、後1分でも警察が来るのが遅れていたら、あの男達に何をされていたか分からない。
そう思うと、全身が震えて変な汗が出てきて、息の仕方が分からなくなる。
『愛華……』
『お兄ちゃん』



