漆黒が隠す涙の雫




学校からの帰り道。


その日は委員会の仕事があって、少し帰りが遅くなった。


施設への帰り道は街灯も少なく、日が暮れるのが早くなってきた冬の時期、まだ17時を回ったばかりだというのに辺りは大分薄暗い。


そんな事もあって、日暮れの早い冬の時期になると委員会とかがあったとしても、必ずお兄ちゃんが待っていて一緒に帰る…というのが、何年も前から私達兄妹の間での暗黙のルールみたいになっていたんだけど…。


その日、お兄ちゃんはどうしても外せない用事が出来てしまったらしく、私は珍しくひとりで帰っていたんだ。


正直、お兄ちゃんの過保護っぷりにはうんざりしていたし、その日の私は“ラッキー!”くらいに思っていたかもしれない。



だってさ?


年頃の女の子が、いつまでもお兄ちゃんと一緒に帰っていたら、さすがに恥ずかしいでしょ?


きっと。彼氏なんて一生出来やしない。




施設までの道は、夜になると人通りの少ない住宅街。


お兄ちゃんにはよく“防犯ブザーくらい持っておけ”と心配されるけど、“お兄ちゃんは心配症なの!”と聞く耳をもってはこなかった。


だけど、さすがにこの日ばかりはお兄ちゃんの言う事を聞いておくんだったと酷く後悔していた。