潤さんは、私の頬から手を離すと、ベッドの向かいに置かれた椅子に座り直し、額を押さえながら、その背もたれに力なく項垂れた。


「せっかく突き放してんのに、変なとこ新に似て強情だよね」


潤さんの鋭い視線が私に向けられて、心臓がドキッと音を立てる。


「愛華の言う通り、俺は新が今、どこで何をしてるのか知ってるよ」


「ほ…本当ですか!?」


「だけど、出来れば愛華には教えたくなかった…きっと新もそれを望んでる」


「……どういう事ですか?」


潤さんは、カタンという音を立てて椅子から立ち上がる。


すると、ゆっくりとした足取りで私の前までやって来て、私の左の二の腕へと手を伸ばした。


まるで、“それ”がある事を分かってるみたいにそっと触れる。



「愛華にとって、辛い話になるよ?

それでも……聞きたい?」



真っ直ぐと私を見詰める潤さん。


彼が言う辛い話は、きっと私の過去に関わる事。


ずっと胸の奥底に押し込めて蓋をしてきた、辛い辛い過去の出来事。


その蓋を開けるのは、とても怖い。


だけど––––––。