荒くなる呼吸。
グラリと歪む視界。
「愛華ちゃんっ!!!」
気持ちの悪い音で刻まれる鼓動。
頭の中で、肉の裂ける嫌な音が聞こえて。
私はそのまま意識を手放した–––––。
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『愛華。行ってくる』
お兄ちゃん?
どこに行くの?
『ごめんな…愛華……』
ねぇ?
何で謝るの?
何でこっちを向いてくれないの?
そう叫ぶ私の声は、まるでお兄ちゃんへと届いてはくれない。
その間にも、お兄ちゃんはどんどん遠くへと離れて行ってしまう。
嫌だよお兄ちゃん!!
行かないでっ!!
私が泣いたから!?
あの時、泣いたりしたから!?
もう、泣かないから!!
何があっても泣いたりなんてしないから!!
だからお願いっ!!
私の側からいなくならないでっ!!
私には……お兄ちゃんしかいないの……。
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「愛華」
「お兄ちゃん……」
ぼやけた視界に映るのは、大好きなあなたの姿。
「お兄ちゃんのバカ……どこ…行ってたの?」
私は、その姿へと手を伸ばす。



