漆黒が隠す涙の雫


「そんなの直接言いに来てって言ってください!何で潤さんは会ってくれないんですか!?ただ、お兄ちゃんの事を聞きたいだけなのにっ!」


「愛華ちゃんの言いたい事はよく分かるよ。でも、ごめんね?潤がダメって言うんじゃ俺は何も出来ないんだ」


眉を下げて申し訳なさそうにする昴さん。


昴さんは、最初こそ不良にしか見えなかったけど、見かけよりずっと優しくて温厚な人だ。


だから、問い詰めれば折れてくれるかなって、そんな風に思ってたんだけど…、


昴さんにとって潤さんの言いつけは絶対らしく、なかなか折れてはくれないようだ。


そもそも、言いつけを守らなきゃならないってどんな関係だ!


潤さんて、あんな綺麗な顔をしていて、もしかしてもの凄く俺様気質とか?


あの顔で、“俺の言うこと聞けよ”…とか……


うん。悪くはない。


漫画や恋愛小説なら、即採用だろう。


だけど、今はそんな脳天気な事を言ってる場合じゃない。


「お願い昴さん。潤さんに会わせて。少しでいいの。もう、あなた達しか頼れないの……」


「…そんな可愛い顔で見つめられてもなぁ」



今日こそは、潤さんに会うだけでも叶えなきゃ、時間ばかりが過ぎて行ってしまう。