「あの人は、どこかへ出かけてるの?」
お兄ちゃんの言う、"あの人"が、父親の事だとすぐに分かったので私は首を縦に振った。
「いつ家を出ていったのかも分からないけど…、どこへ行ったんだろう…。」
「どうせ、また賭博でもやってるんだろうな。」
「また…帰ってくるのかな………」
「それじゃあ、帰って来る前に一緒に逃げよう!」
「えぇ!?」
「もう持ち物なんて何もいらない。ナオだけが居てくれたらそれでいい。
あいつが帰って来る前に、早くこの家から出よう!」
お兄ちゃんに腕を掴まれた私は、咄嗟にそれを拒んでしまう…。
「でも!もしもまた失敗したら…っ!」
「どうせ失敗しなくてもまた酷い目に合う!
生きている限りあいつは俺たちを許さない!
…お前が俺に教えてくれたんだよ…?逃げる選択肢もあるってことを…っ!」
そう言ってお兄ちゃんは、私を連れ出してくれた。
ゴミ溜まりの小さな箱の中から。
私はもうこの手を拒んだりしない。
怖がらない。
逃げる事から逃げない。
大事なモノを離さない。
だって、外の世界はこんなにも、
広くて気持ちよかったのだから---。


