お昼を過ぎて…
ー ピンポーン ー
軽快に家のチャイムが鳴り響くと、
床に寝転んでいた父親がようやくむくりと起き上がった。
「…ったく、誰だよ。」
寝癖だらけのその頭をポリポリと掻いて、
玄関へと移動する。
「…どなたですか?」
玄関を開ける音と共に父親の声が聞こえた。
狭いアパートの一室だからか、部屋にいても玄関の声が丸聞こえだった。
「えっと…お父さんでいらっしゃいますね?
私、和泉小学校でナオくんの担任を務めております佐々木と申します。」
「…あー、どうも。ご用件は?」
「えーっと、ですね。
最近、ナオくんが学校に登校されてませんので心配になって…。ちょっと中お邪魔させていただいても宜しいでしょうか?」
「すみませんがウチ散らかってますんで。」
「…そうですか。それではナオくんのお顔だけ見せていただくことはできないでしょうか?」
もしも、今…
私がこの小さな体で、
『助けてください』
と大声を出したら
…何かが変わるのだろうか…
…イヤ、
でもそんな事をして失敗したら…
また…
「ナオは今体調を崩して寝ています。申し訳ありませんがね…お引き取りください。」
「…そうですか。……わかりました。何かありましたらお電話でも構いませんので学校までご連絡頂けたらと思います。」
「あー、はい。」
「以前…お母様が亡くなられたこと、ナオくんから聞きました。
こちらでも協力できることがあれば何でも仰って下さいね。
お父様お一人で、大変な事もあるかと思いますので…」
「ありがとうこざいます。そう仰って頂けるとこちらも肩の荷が下りますわ。思春期と反抗期の息子2人でしょ?こちらも手を妬いとるんですわ〜。」
…大嘘つき。
「そうですよねぇ。内情お察しします。
ではまたこちらからもご連絡させていただきますね。」
「ええ、どうも。」
「それでは、お忙しいところ失礼致しました。」
待って…
行かないで………!!
お兄ちゃんを…助けて………!!!
そう叫んでいるつもりなのに、
声は出ていなかった。------
私は
私という人間は
最低な弱虫だ。


