タイミング悪く帰ってきた父親は、お酒とタバコの匂いを漂わせて、不機嫌にそこに突っ立っていた。
「----ギャアアアアア"ッ!!!!」
次の瞬間、そう叫んだのは私だった。
父親は靴を履いたままの私の髪の毛を掴んで、部屋の奥まで引きずると、そのまま身体を放り投げた。
ブチブチと何本もの髪の毛が抜ける音と、床に叩きつけられた身体。
一瞬息が出来なくなって、悲痛に顔を歪ませるけど、非道な父親はそんなことは御構い無しだった。
「胸糞悪りぃ。パチンコには負けるわ、お前らは逃げ出そうとしてるわ。どうやら仕置きが足りなかったようだな。」
「っ父さん!!!待って!!!!ナオは悪くない!!ナオを殴らないで!!」
突っ伏する私を庇うように、お兄ちゃんが覆い被さった。
「…っ…にぃちゃ………!」
「俺がナオの鎖を解いた!!!嫌がるナオを無理矢理家から連れ出そうとしたんだ!!!!」
違う
違うよ…!
----ドスン………ッ
重低音が聞こえるほどの重たい蹴りだった。
それは紛れもなく父親が、お兄ちゃんを蹴った証拠。
「…………っ……!!」
言葉にならないその声は、私の耳元にだけ聞こえたのだった。
「んなこたぁ、どうでも良いんだよ。とにかくどっちでもいいから俺の怒りを鎮めてくれや…!」
ドスン、ドスン、ドスン、ドスン…
重低音は何度も聞こえた。
「…わぁぁぁ……お兄ちゃんが死んじゃうよぉぉ!やめてよ!やめてぇぇええええ…!!」
ドスン、ドスン、ドスン、ドスン…ぷつん。
鳴り止まない重低音に、
私の精神が…
壊れる音がした。


