ふたりぼっちの指切り

闘病日記か?

良は考えた。

そう呼ぶにはあまりにも日常のささやかなことを綴っているが、書き始めたのは彼女が余命宣告をされたその日だった。

いや、違うな。
考えた末彼はかぶりを振った。

見逃してしまいそうな些細な幸せを、嬉しかった会話を、思うままに書き綴られたその日記は、気が強いが本当は優しい彼女の心根が現れた"いつも"の毎日の記録だった。

触れたら壊れそうな優しさでなく、包み込んで棘さえはね返すような、そんな。

ふっと笑みをこぼしながら見ていった良は、自分と彼女が出会った日の日付を見てどきりとした。

『なんだか頭の良さそうな、一つ下の男の子と会った。涼し気な目をした男の子。複雑な事情を抱えているのにいつも微笑んでる人で、強いんだな。』

(……強くなんてない)
目を伏せた良は、唇を噛んだ。

臆病なだけだ。
対面を気にして心配をかけまいとして、自分を殺して笑っていれば楽だった。

『その日、約束をした。いつかその天国の青い蝶のDVDを見ようって。聡明な考えを持っているから、議論するのが楽しみ。』

どことなく弾んでいる書き方に、良は思わず笑みを漏らした。

『お母さんが来てくれた。また泣いてしまった。嫌な子だな私、上手に優しくすることも出来ないで親不孝者で、冷たい人間だ。』

そんなことはないと否定しようにも、ぶつける先がいなかった。

誰より優しいくせに、表情をつくるのが苦手で誤解されそうだけれども、気配りを大事にしていた。

知ってるよ。
良は無理やり笑みを作った。