しかし、話そのものは他人である加代でも、胸が痛くなるものだった。
「私も青い蝶に関する映画は見たことがあるわ。違う映画だけれど、二年前に。『アリスのままで』という映画よ、聞いたことある?」
「いや、ない。どんな映画?」
「若年性アルツハイマー病になったヒロインが、記憶を失っていく物語で、青い蝶のネックレスはヒロインの母の遺品なの。それがキーアイテムになってきて…うん、これも、言葉じゃ言えないね」
ははっ、と笑った加代は、「でも」と続けた。
「その蝶って、アリス…ヒロインの名前よ…
に、似ている気がしたの。蝶は短い命ながら精一杯生きているから不幸ではないという言葉、アリスの母からアリス、アリスからアリスの娘リディアへと受け継がれていく。短い命かもしれないけど、アリスはアリスのままでいられる時間を大切に生きていくのだと思う」
考え考え話す加代のつむぎ出す慎重な言葉に、良は黙って聞き入っていた。
「青ってコミュニケーションを表す色だとどこかで聞いたことがある。それも、心のコミュニケーションを。だからきっと、忘れてしまっても繋いでいるのよ。家族を、心が。絆が」
言い終わって、急に加代は気恥ずかしくなった。
「ごめん、私なんてこと言ったんだろう」
「ううん。教えてくれてありがとう。その映画、見てみたかったな」
「そうだね…私も、『天国の青い蝶』、見たかった」
しみじみと言うと、良は不思議そうな顔をして、
「ならDVD貸そうか?」
「えっ、いいの?」
目を丸くした加代に、良は明るく笑いかけた。
「私も青い蝶に関する映画は見たことがあるわ。違う映画だけれど、二年前に。『アリスのままで』という映画よ、聞いたことある?」
「いや、ない。どんな映画?」
「若年性アルツハイマー病になったヒロインが、記憶を失っていく物語で、青い蝶のネックレスはヒロインの母の遺品なの。それがキーアイテムになってきて…うん、これも、言葉じゃ言えないね」
ははっ、と笑った加代は、「でも」と続けた。
「その蝶って、アリス…ヒロインの名前よ…
に、似ている気がしたの。蝶は短い命ながら精一杯生きているから不幸ではないという言葉、アリスの母からアリス、アリスからアリスの娘リディアへと受け継がれていく。短い命かもしれないけど、アリスはアリスのままでいられる時間を大切に生きていくのだと思う」
考え考え話す加代のつむぎ出す慎重な言葉に、良は黙って聞き入っていた。
「青ってコミュニケーションを表す色だとどこかで聞いたことがある。それも、心のコミュニケーションを。だからきっと、忘れてしまっても繋いでいるのよ。家族を、心が。絆が」
言い終わって、急に加代は気恥ずかしくなった。
「ごめん、私なんてこと言ったんだろう」
「ううん。教えてくれてありがとう。その映画、見てみたかったな」
「そうだね…私も、『天国の青い蝶』、見たかった」
しみじみと言うと、良は不思議そうな顔をして、
「ならDVD貸そうか?」
「えっ、いいの?」
目を丸くした加代に、良は明るく笑いかけた。

