ふたりぼっちの指切り

「あの子…言っていたの。約束をしたって」
「約束?」

窓を少し開けた病室に、透明な風が吹き込んだ。

「友達と一緒に、映画を見るんだって、DVDを持ってきてくれると言っていたって…だから、それまでどんな痛みも耐えきるって」

叶えるまでは、譲れないって。

そこまで言って、言えなくなった。

「お母さん…」

白く綺麗な床に、ぱたぱたと水滴が落ちる。
その様子を、良は息を詰めて唇を噛んで、眺めている事しか出来なかった。

「その頃にはきっともう、加代には分かっていたのね」

自分の寿命が長くはないことを。
だから、最後の約束になるかもしれないと、会えるのも最後なのかもしれないと思って、なおさら浮かれているような素振りを見せて心配かけまいとしたのかもしれない。

一体、胸の内にどんな感情を秘めていたのだろうかと、良は何とも言えぬ表情を浮かべた。

「それなのに、私は何も気づいてやれなかった」

母親なのに、と呟いた唇は青ざめ、ビーズのようにいくつも零れる大粒の涙に、良は遠慮がちにハンカチを差し出した。

そんな良の瞳も揺れていて、晶子は思わず苦笑した。