ふたりぼっちの指切り

良は言葉も出せずに目を見張る。

「……か…」

加代は、弱々しく酸素マスクを指さした。
戸惑う良に、いいよというふうにかすかに首を縦に振る。

まずいことになりはしまいか。

多分なるだろう、と良は結論付けた。

それでもそれが願いならば、自分には叶える義務がある気がした。

ゆっくりと酸素マスクをずらすと、加代は口を開いた。

だが、空気の漏れる音が喉を通り過ぎて、少し咳き込む。

「…、りょ、…」
「なに?」
耳を加代の口元に近づけた良は、静かに聞いた。
「……が……」

懸命に口を動かした加代は、悲しい顔をして笑った。そして、ほとんど動かない手を僅かに持ち上げ、冷たくなっている良の頬に触れる。

もう一度同じ形に唇を動かした加代の言葉を聞き取ろうと、良は必死に耳を澄ませた。

「…………う」
ふっと最後に息を吐き出すと、彼女の目尻から伝った雫がしゃがみこんだ良の膝頭に落ちた。

「まっ…」
ゆっくりと。
「…加、代」
世界が滲んで。
「………っ…」
目眩がした良は目を瞑る。加代の温もりの残る手が頬を滑り落ちたのが分かった。

言葉を呑み込んだ良は、絞るように息を吐いた。