ふたりぼっちの指切り

そして夜が来た。

酸素マスクを付けた加代の頬は、暗い中でも淡く燐光しているかのごとく白かった。

今日は、やけに星の冴えた夜だ。

朝が来ないでほしいと少年は願った。
ピッ、ピッ、と規則正しい心電図の音が病室に響く。
夜の静けさが二人を包み込んでいた。

「加代」
聞こえているだろうか。
この声は、加代の耳に、もしくは加代の心が見ている夢に、届いているのだろうか。

「僕が呼んだと、言ったよね」
そして僕も、君が呼んだから行くと言った。
それならば、この呼び掛けを彼女はどんな想いで聴いているのだろうか。

声を聞きたかった。
笑いかける彼女を想像する度に胸が悲鳴をあげそうに押し潰される。

良、と。
いつも僕の周りの空気を凛と震わせる声。
少し低めの優しいけれど、ぶっきらぼうに聞こえる君を表すような声が聞こえる。

空が歪んで、彼女の色に染まる。
果てしなく、彼女の言葉で彼女の声に染まっていく。

「…きだ」
聞こえないほどに絞った声に、加代の瞼が震えたように見えた。

どうして。

「………っ……」

伝わった途端にすれ違う。

隣にいられるだけで、幸せだった。

一直線に握ったつもりだった自分の手のひらは、実際にはよろよろと加代の強ばった冷たい指先を捉えただけだった。