ふたりぼっちの指切り

「そんなことまで気にしてしまうのは、疲れるでしょう。私は怒っているわけじゃなくて、起こりそうな色々が心配なだけ」

そう言ったがやはり、余計な癇癪を起こした時もあったと思うので、微かに後ろめたさが背中を突いた。

「なに、起こりそうな色々って」

涼しい瞳に見つめられ、加代は少しばかり白い頬に薄紅を刷いたようになった。

「…良に嫌われたらとか。誤解されたらとか。気持ちの整理がつかなかったり、色々よ」

「…なんだ」
しばらく黙って聞いていたあと、良は盛大に吹き出した。

これだから言いたくなかった、と加代が肩をすくめてそっぽを向くと、良はごめんごめんというように掌を合わせた。

「私だってなんでと思うけど、仕方ないじゃない。諦めたり、期待してしまったり、…期待を裏切られたり、それでも、思い知っているのに望みを賭けるなんて馬鹿なことしたのははじめて」

「馬鹿な事じゃないよ。少なくとも僕にとっては」

しばらくただよった沈黙は、しかしお互いにとって心地の良いものだった。