ふたりぼっちの指切り

「…お母さん、病気になっちゃった」

平坦な声を出そうと努めているのが、僅かな震えで良には分かった。

「うん」
「ストレス性、だって。私のせい…だよね」

ずるい言い方をした。

加代は、言い終わってからはっとする。

良に問うような言い方をしたら、きっと否定するだろう。それを承知で、無意識に慰めの言葉を欲しがったのかもしれない。

しかし、その予想は外れた。

「そうかもしれない」

厳しい声音が、加代の耳朶を打つ。予想外の言葉に目を見開いた加代だが、すぐに頷いた。厳しい声の中にある思いを感じたからだ。

「たしかに現実的に考えればそれもあるとは思う。だけど親が子供を心配するのは当たり前のことだし、気に病むことは無い」

それでも気が休まらないのなら、と良は淡々と続けた。

「運命を憎むより、僕を憎めばいいんだ」
「…何を言っているの」
困惑する加代に、良は軽く微笑んだ。