「ごめん」

ようやく絞り出した声は途切れ途切れで、迷うように震えていた。

「あなたの気持ちには、答えられない」

もうあの時とは。
何もかもが、変わってしまった。
私も、あなたも。

「どうして」
「もう無理なの」
好きな人が出来た、とは言えなかった。
正確には、言おうとしても口が動かなかった。

「………」
明日がないなんて、悲しい言葉を言わせたくなかった。

「でも、迷ってる」
指摘した声に、むっとして加代は言い返した。

「あなたを選ぶかどうかで迷っているんじゃない、これが誰にとっても最善の選択なのか迷っているだけ」

「それは同じことだ。加代は今でも、俺を傷つけまいとしている。それならこれは最善じゃない」

その通りだった。
言葉に詰まる加代を見て、寂しそうに笑う一理の姿に胸が傷んだ。

でも、それでも。

「最善ではなくても、選ばなければならないのなら私は自分に正直でいたいの」