唖然とするほど爽やかに、強引な言葉を言い放った一理に思わず良も返す言葉を失くした


それを肯定とみたようで、一理は硬直していた加代を良のかげから連れ出した。

「今さら何のつもりなの」

睨んだ加代は、廊下に二人で出たことを良に誤解されやしまいかと、そのことで頭がいっぱいだった。

「伝えに来た」
「え?」
「後悔すると思って」

何を。
聞き返そうとして、声にならなかった。
自分の中で響いている鼓動の音が煩くて、瞬きさえ永遠に感じる。

「好きだ、加代」
「やめて!」
叫んだのは反射で、しかも出したことのない大声だった。

人を拒絶するのはもううんざりだ、傷つけるのも。だのにどうして運命は。

「なんで…なんで、今さら現れるの」
苦しくて吐いた息を、空気を潰すように作った拳を振り上げられなかった。

「私を捨てたのはあなたじゃない」

小さく、しかしこれ以上ないほどに鋭い口調に青年も怯んだようだったが、後には引かなかった。