「良？」

跳ね起きた加代は、慌てて周囲を見回し、隣で寝入っている母に目を移した。

カーテンを開けると、目覚めたばかりの目には眩しい朝日が射し込み、慌てて閉じて息を吐いた。

机の上に剥き終わったりんごがあり、皿の上にきれいに並べられたそれを見る。

「ごめん…」
お母さん、と呟いてぎゅっと掛け布団の端を握りしめた。

あなたはこんなにも想ってくれているのに、私にはどうしようもないくらい、いちばんに考えてしまう人がいる、だなんて。

そんなこと言えるはずもないし言うつもりもないが、罪悪感がざらりと胸を撫でた。

好きに順列はないと信じていた。
そんな不平等なことがあってたまるかと。
でも、違うんだ。

「ごめんね…」

好きだよ、大好きだよ。
それなのに心を動かす重みが違う。

こんなこと、知りたくなかったけれど、知らなくてはならなかったことなのだ。

会いたい人には順番がある。
一度に欲張ることは、出来ない。

最期に会いたい人は誰かと問われたら、母の顔は間違いなくちらつきながらも、私はきっとあの人を選んでしまう。

その、たしかで切ない、予感があった。