星の降る夜なんて、この目で初めて見た。

多分私の生きている中で最初で、最後だ。

こんな綺麗な星空。

「すごい…透明な、鏡みたいな夜空」
遠くまで、こんなに鮮明に星が瞬くのが見えるなんて。

蒼い、というよりは藍の空。紫がかったそれは、加代の目には眩しいほどだった。

「あ…」
一瞬、尾を引いて流れる星が見えて、加代は目を丸くした。
「お母さん」
「んー?」
そばでリンゴを器用にむいていた母に声をかける。

「今日って、流星群?」
「そうよ。ニュースでやってたわ。何座だったかしらね…」

考え込む顔つきになった晶子をよそに、加代は窓に張り付くようにして飽きずに空を眺めた。

その空を眺めているうちに、色々なことが思い出されてしまった。

今日出会った良の母のこと、良のこと、残り何日かのこと。
(また、人に嫌な顔をさせてしまったかもしれない)
親身になってくれた織音に綺麗事だなんて、なんてことを言ったのだろう。

顔を赤らめた加代は、深く反省して息をついた。

白い息が結露の張った窓に吸い付くように伸びる。細ばった指先をその曇った窓に這わせた。