ふたりぼっちの指切り

「お互い大変なのに自分のことばっかり…いつもそう。最低で、最悪で、なのにどうしてこんな私を良は好いてくれるんだろうって」

不安になる。
こんな私だと分かって好きでいてくれるのか。そうでなければ、本音を言った途端に、嫌われてしまうのではないか。

良はそんな性格じゃないと知っていても、怖いものは怖いのだ。
言うほどに自分が好きでなくなる。考えるほどに鬱々となる。

目線を床に固定した加代は、きまり悪そうに頭をかいた。

「ごめんなさい、織音さんにこんな話しても困りますよね。すみません」
「…加代ちゃん…私は思うのだけれど、自分のことをそんなふうに言う人で、本当に嫌な人なんてあまりいないと思うの」

あなたはいい人よ、と織音は言ったが、慰めの常套句のようにどうしても聞こえてしまう。

「綺麗事じゃ、始まりませんよ…」
反発というにはあまりに力の無い声音に、織音は戸惑った。
「織音さんが私のことを思って言ってくれるのはとても分かります。目が真剣だから」

それはとても嬉しい、でも。
加代は睨むようにあげた目を織音ではなく窓に据えた。

「きっと、それを言うべきは、私なんかじゃないんです」

綺麗事だと思えてしまう、穢れた私には。
どうせ一般論だと笑えてしまう、私なんかには。

「勿体ないです」

絞り出すような加代の声に胸を突かれ、織音はしばらく押し黙った。
今の状態の加代には、何を言っても届かないと悟ったのだ。

「ごめんなさい………」

織音さんの折角の好意を無駄にして。
そう、切れ切れに言った。
そうして、笑ったのだ。

「ありがとう、ございます」

泣きそうな目で。
つらそうな目で。
それでも気丈に笑ってみせる加代の姿に、織音まで泣きたくなった。

胸の奥にとどこおる、わだかまる感情を抑えて、この歳で辛いであろう余命宣告まで受けて、それでも人のことを思って笑うことの出来る少女なのだ、この子は。

(強いよ、君は)
織音はため息をつくと、了承の意味で頷いた。

「分かったわ。でも、いつでも私は力になるから」
「はい」

またまっすぐに微笑んだ加代を見て、織音は自分の無力さに胸が痛くなった。