ふたりぼっちの指切り

「抱えていると前があんまり見えなくて。ここに入院している息子に、昔大好きだったぬいぐるみでお見舞いしてあげようと思って」
「はあ…」

それはまた、随分奇抜な発想で。
そう言いたげな顔をした加代だったが、思い直して顔を上げた。

「もしかして、宮城さんですか?」
「あら!そうよ。どうして分かったの?」

面白がるように興味津々な目をする女性に、加代は幾分か戸惑ったように答えた。

「私、多分あなたの息子さんと、病室が隣なんです。話すことも多くて…」

現状を思い出した加代はだんだんと声を小さくしたが、女性は構わず頷いた。

「そうなの。いつも息子がお世話になっています。宮城良の母で、宮城織音と言います」
「織音さん…」

綺麗な名前ですね、とお世辞ではなくこぼれた言葉に、宮城織音は嬉しそうに笑った。

「ありがとう。あなたの名前は?伺ってもいいかしら」
「あ、はい。桜木加代です。中学三年生です」
「まあ、息子より一つ年上なのね。どうりで大人びていると思ったわ、高校生かと」
「いえ…」

そんな、と謙遜して加代は目を伏せた。
「むしろ彼の方が大人びているくらいで、その考え方などにはいつも、学ばせてもらうことばかりです」

懐かしそうに語る加代の瞳を覗き込み、織音はくすくすと笑った。

「…?」
不思議そうにする加代に、織音は、
「良が楽しそうに友達のことを話すの、あんまりないのよ。小さい頃から大人しい子だったかは…校庭で遊ぶ男の子達に混ざらずに本を読むようなね」
「そうだったんですか」
「そう。でも、加代ちゃんのことはすごく話してくれてね、私も嬉しかった」

「え…」
私のことを?
信じられずに目を瞬かせた加代は、頷いた織音を見て、顔を歪めた。
なんでこんな私なんか。