「ありがとう」
「いや…僕は、何も出来なかったし」
医者でも看護師でもないのにそれは当たり前だと思うのだが、良は間近で加代の倒れたのを二度も見たせいか、悔しそうにしていた。
「来てくれるだけでいいから」
気負わないでというつもりで気軽に放った言葉だったが、良が眉をひそめたのを見て慌てた。
「私、何かまずいことを言った?」
「…言ったよ。加代はいつだって思わせぶりすぎるんだ」
良の言う意味が分からずに首を傾げたが、良の視線から視線を外せなかった。
何かを言おうとして良が口を開いたのがわかったが、結局口を閉じてしまった。
けれども、私には良が何を言いかけたのか分かった気がした。
言ってほしいと思う私と、言ってもなんにもならないと思う私がいて、その割合は後者の方が多めだった。
言って欲しくないのではない。むしろ、嬉しいのだ。
それでも、あと何日かしか生きられないという言葉が鎖のように加代の心を締め付けていた。
それほど人の人生に干渉できる時間が少ないのに、関わった人に何かを残せるほど偉大な人物ではないということが自分で痛いほど分かっていて、だからこそ言えずにいるのだ。
(結局は私たち二人共臆病なのだ…)
言って関係が変わるのが怖い。
拒まれるのはもっと怖い。
そして、相手の人生に介入するのが、相手のためにならないと、僅かな時間を中途半端に共有しても、意味がないと思うからだ。
「いや…僕は、何も出来なかったし」
医者でも看護師でもないのにそれは当たり前だと思うのだが、良は間近で加代の倒れたのを二度も見たせいか、悔しそうにしていた。
「来てくれるだけでいいから」
気負わないでというつもりで気軽に放った言葉だったが、良が眉をひそめたのを見て慌てた。
「私、何かまずいことを言った?」
「…言ったよ。加代はいつだって思わせぶりすぎるんだ」
良の言う意味が分からずに首を傾げたが、良の視線から視線を外せなかった。
何かを言おうとして良が口を開いたのがわかったが、結局口を閉じてしまった。
けれども、私には良が何を言いかけたのか分かった気がした。
言ってほしいと思う私と、言ってもなんにもならないと思う私がいて、その割合は後者の方が多めだった。
言って欲しくないのではない。むしろ、嬉しいのだ。
それでも、あと何日かしか生きられないという言葉が鎖のように加代の心を締め付けていた。
それほど人の人生に干渉できる時間が少ないのに、関わった人に何かを残せるほど偉大な人物ではないということが自分で痛いほど分かっていて、だからこそ言えずにいるのだ。
(結局は私たち二人共臆病なのだ…)
言って関係が変わるのが怖い。
拒まれるのはもっと怖い。
そして、相手の人生に介入するのが、相手のためにならないと、僅かな時間を中途半端に共有しても、意味がないと思うからだ。

