「わかった。お母さんがいてくれるなら心強いし、嬉しいな」

こう言えば、母はきっと喜んでくれる。

少しでも希望を持っていてほしい、母には。
そう思って言ったのに、母はどうしてだかいっそう泣き出した。

「えっ、お母さん」
私が慌てると、母は急いで涙をハンカチで拭き取り、ごめんねと繰り返した。

「無理しないでいいのよ。無理させてごめんね。私が無理させてたのね…」

しゃくり上げる母が子供のように見えて、加代は困った。そう思わせてしまったとは。

「お母さん、大丈夫だから」
「ううん、いいの」
晶子はきっぱりと言い切った。
「大丈夫って言わなくてもいいのよ。大丈夫でも、大丈夫じゃなくてもいいの。私のことを気にかけないでね」
「そんなこと…」
「気にしてるわ。それを隠さないでいられるような母親じゃない私が悪かったのかもしれないけど」

加代は、びっくりして首をぶんぶんと横に振った。

「そんなことない!それだけは絶対にない」
信じて、と真摯な目をした娘を見て、晶子はいたわるそぶりを見せた。

そんなことない、加代はもう一度確かめるように呟いた。信じられるように。

だって、いつもあたたかかった。
私がどんな態度をとっても変わらずに接してくれた。当たり前だけど、何気ないけれど、いつだって笑っておかえりと言ってくれた。

だからこそ少し痛いだけなのだ。
そんなふうに優しく在ることの出来ない自分に突き刺さる。

私はまるで、こんなふうにはなれないと。