「…おはよ」

「うん…おはよう」

目を開けると、優しい笑みが視界に入った。
なんとなくそれは予期していて、加代が手を伸ばすと良はその手をとった。

「昨日はごめん」
「ううん…むしろ私が言うことよ。むきになってごめんなさい」
それより、と加代はそっと窓の外に目を向けた。

「昨日の嵐が去って、空がすごく綺麗なの」
そう言うと、まだかすかに震えている眼差しを良に据えた。

小さく息を吸い込む。
「あなたと一緒に、見れてよかった」

余命宣告から考えればもう二週間は過ぎている。いつ終わるか分からない毎日の中で、限られた時間、限られた加代の見ることの出来る青空。

それを二人で見られてよかったと、相当な勇気を振り絞って言ったのだろう少女の手を少年はしっかりと握りなおした。

「僕もだ」
よかった、と笑い返そうとして、加代は突然ひゅうっと呼気を荒らげた。