「加代が好きな漫画とか小説、色々持ってきたわよ」
「わぁ、ありがとう!」

目を丸くした加代は、心の底から笑みを見せた。
晶子は、好きなものを見ると目の色を変えるところは昔と変わらないなと頬を緩めた。

暖かな眼差しに気づき、嬉しいながらも少しだけ居心地の悪いような思いに視線をずらした。

「…今日はこれで帰るね。また来るから」
「うん」

そんな気配を感じたのか、何かを察したようにそそくさと帰り支度を始めた晶子を引き止めようとした加代だったが、天気の悪くなっていく空を見て思い直した。

「そうだね。今日はありがとう。また今度」
ふっと口角を上げた娘に晶子も笑い返し、鞄を肩にかけた。
「あっ、そうだ」
思い出したように声を出した晶子は、トートバッグからミニバスケットに入った花を取り出した。

「綺麗…」
「ふふ、すぐ飾れるし可愛いでしょう?匂いもきつくないものを選んだの」
「うん…うん」

何回か頷いた加代は、ミニバスケットを抱きしめて目尻を下げて懸命に微笑んだ。

「本当に、ありがとう」