良が発した一言は、私を責めるものではなくて、真剣に考えてくれた一言で、その親身さが嬉しく、でも余計に辛くなった。

私は自分と同じか、もっと苦しい状況の人に残酷なことを答えさせている。

その実感がちくちくと胸を突いた。

「…考えないようにするのも、こわくならない?私は、こわい」
正直に述べると、良は首をかしげた。
「どっちにしろ答えがすぐ迫るから、僕にとっては一緒だと思ってたんだ」
「そ、そしたら、正解か不正解だったかも分からないじゃない」

…意識がなくなったら、とそっと付け加えた加代に、良は眼差しを強めて言った。

「死ぬのがこわいのは、生きたいからだろ。僕は別に、この世に執着がないからあまりそれ自体には構わないんだ」
「執着がない…って」
加代が呆気に取られると、良は「そんなにおかしいかな」と苦笑した。
「おかしく…はないけど」

なんだか悲しくなってしまうのは、どうしてなんだろうか。

「お母さんは?」
「母には、僕がいるせいで苦労をかけているから」

今にも自分はいない方がいい、と言い出しそうで加代はひやりとした。
暗い光が良の中に、ずっと灯っているみたいだった。

なんとかしてそんなことはないと言いたかったが、他人の口出しできる事情でもないような気がして渋々口をつぐむ。