2019年、と。
たしかに彼女はそういった。

まさか、ありえない。
あまりにも馬鹿げた考えで、歪んだ唇から空気が漏れる。

ひなたの小説の読みすぎかもしれない。だって、こんなお決まりの設定、今まで星の数ほど使われてきただろう。

ああ、それともあれかな。2019年だってなら、本でよく見る【熱中症】って病気。

きっと今日もあと少ししたら電話がかかってくるだろう。
『ごめんなさい、昨日はあたしがおかしかったの』って。


聞きもせずに流しているだけだったラジオを止めて、椅子から立ち上がる。
待てども待てども、電話はならない。

こんなに時間が遅く感じるのは久しぶりだ。
一人でぼんやりしているだけだと余計なことばかり考えてしまう。

だからといって、僕の部屋には暇を潰せるものなんてほとんどない。
六畳ほどの一室に、ベッドと机、そして本棚が置いてあるだけの簡素な部屋だ。
娯楽と呼べるのは、机の上に置いてあるラジオ、そして本棚くらいのもの。

どの家具にも年季が入っており、明日にでも壊れてもおかしくない。いや、なんならもう椅子などは壊れている。
無理やりガムテープで折れた脚を固定してなんとか生きながらえさせているのだ。


「2019年…か」


ふらりと本棚に近づき、何冊か手に取って裏表紙を開く。
2035年、2047年、2023年…


「2019年、あった…」


意味もなく、その年に刊行された本を見つけ、パラパラとページをめくった。