さよなら流れ星




息苦しかった。
溺れているみたいだった。
呼吸の仕方がわからなかった。

酸素を求めて喘ぐ魚みたいに、家の外へとかけだした。

生暖かい空気を吸って、吐いて。
首筋に流れる汗を拭うこともしないまま走り続ける。

走って、走って、走り続けて。
肺が限界を迎えたときには、知らない場所にたどり着いていた。

今すぐにでもコンクリートの地面に倒れこみたい衝動を抑えながら、膝に手をついて肩で息をする。
そのとき、ジャージのポケットの中にスマホが入っているのに気づいた。

疲れ切って震える手でなんとかそれを取り出して、電話帳で彼の名前を探す。

荒い息のまま、呼び鈴の音を聞く。


ジリジリと照りつける太陽に陽炎が立つ。
ぼんやりと揺れる視界。
まつげが汗を弾く。


その声が聞こえてきたのは、吐息が穏やかになったのとほぼ同時だった。