さよなら流れ星





「まあまあ、夏休みくらいいいじゃないか、ちょっとぐらいダラけても。」


さっきとまったく違う意見でお母さんをたしなめながら、あたしに「なあ?」と同意を求めるお父さん。
その言葉に返事はしないで、口元に笑みを貼り付けたまま定位置、お母さんの隣に座った。

お父さんの隣にある椅子は、不自然に空いたまま。


「そうだ、みんなまだお昼食べてないよな?お父さん、寿司買ってきたんだ寿司。」


お父さんは、変わらず明るい口調でそう言うと、キッチンにある冷蔵庫から風呂敷を取り出した。

あたしは「やったー!」とわざとらしく喜んで、横目で隣に座るお母さんの顔色を伺う。
お母さんはピクリとも口元を動かさずに、ぼんやりと窓の外を見つめていた。

そんなお母さんを見て、お父さんは気まずそうに頭をかく。
そのまま視線をあたしの方へ向けると、目を合わせないようにまつげを伏せて、


「ひなた、秀人のこと呼んできてくれないか?」


と、明るい声のままで言った。