MEMORIZE BLUE

「あと、聞いていい?」
「何?」
「佐島のどんなとこ好きになったの」

唐突だが、当たり前といえば当たり前の疑問に葵は考え込んだ。
「去年の三学期、席が同じだったの」
その頃を思い出して、葵の顔にかすかな笑みが浮かんだ。

「はじめの頃は、いつも寝てる印象しかなかった。むしろ、無気力な奴だなぁって腹立たしかったくらい」

授業中も安らかな寝息を立てていて、先生もその豪快な寝入りっぷりに何かを諦めたのか、極力こちらを見ないように授業を進めていた。

「だけど、怖いって有名な地理の中澤先生がいつもの川島先生の産休の代理で来た時、思いっ切り怒鳴られてさ」

薄目を開けた佐島の目の前に血管の浮いた顔が迫ってるの。
開口一番に佐島、なんて言ったと思う?

葵の質問に、小夜は首を傾げた。
「…すみません、とか?」
「そんな殊勝な人物なわけないじゃない」
「だよねー」