「葵…?」

「っ」
振り返って、息を呑んだ。

「どうして」

止み始めた雨の中に佇む二人は、お互いにびしょ濡れだった。

「…やっと、見つけた」

口端を微かに上げた佐島に、葵は震える声で訊ねた。

「小夜は…?」

沈黙する佐島の顔で、何もかもを悟った葵は、その場にへたりこんだ。

「行くのかと思ってた」

神妙な声に、顔もあげずに答える。
「今、私が行っても傷つけるだけだから」

そう言って、ようやく佐島を見上げた葵の瞳は悲しくなる程沈んでいた。

結局、変わらないままに終わってしまった。
どんな一言も言えずに。

今更どう弁解できるというのだろう。

「小夜、を…失いたく、なかった」

膿んだ傷口をさらけ出すように、髪を乱して叫ぶように言った少女の告白に、青年はただ静かに耳を傾けた。