とくとくと心臓の打ち付ける音を聞きながら、これは自分のものか大和のものかと考える。

寄り添った葵は、されるがままになっていた。

自分のせいで幾度も傷ついたであろう、ぶっきらぼうで心優しい青年のために。

そんな葵の心情を推し量った大和は、これ以上なく触れたら壊れそうな淡い笑みを浮かべた。

今にも雨にとけて消えてしまいそうな、儚くて、切なくて、何を言えばいいのか分からないほどの。

「大丈夫だよ」

そっと背中に手を回してあやす様にぽんぽんとする葵に、大和は苦笑した。

「どっちが」

「………」
見透かされていた、と後ろめたい顔をした葵の頭を軽く撫でる。

触れるか、触れないかの手を感じた葵は泣きそうになった。

手を差し伸べる世界が愛しくて、雨を叩きつける空が苦しくて、傷つけあうことが哀しくて。
そうして触れてほしいと願った。