「…佐島か」

確かな怒りを含んだ呟きに、慌てて否定を口にする。

「それはちがう!…ただの、自業自得で関係、ない」

安定しない息を整え、すっくと立ち上がる。

「放っといて」

「…そう言われてはいはいって、置いていけると思うのかよ」

今度は、怒りというより悲しい声音で、葵が息をつめて振り返ると、大和も全身雨に濡れていた。

「なんでっ…どうして、こんなこと」

「どうしてかって?」

「……大和…」

分かっているくせに。
そう、雨に紛れてしまいそうだった言葉を拾い上げ、葵は何も言えずにただじっと大和を見上げていた。

「風邪引くよ」

そう言った大和は、突然葵を抱き寄せた。

「…っ」

息を呑んだ葵だったが、その冷たくなった優しい腕を拒むことが出来なかった。