「……っ」

頬に手を当てた自分に、笑いをこらえる佐島をじとりと見たあと、小夜はため息をついた。

事のあらましを聞かせた小夜に、佐島は終始静かに相槌を打っていた。

「それは、葵の本心なの」
尋ねる佐島に、声がつまった。

「…」
沈黙を守っていると、「分からないよな」と言った佐島を見て思わず言った。

「違うの」

小夜は、強く首を横に振った。

「私、しっていた」

葵が。

「私のために…」

嘘をついて、くれたこと。

「なら、どうして」
分からないという顔をする佐島に、今にも小夜は泣きそうな顔をして、しかし決して泣かなかった。

「葵の気持ち、痛いほど分かった。自分が傷ついてまで守ってくれた私の決意を伝えるまで、葵に顔向け出来ないと思ったから」