あんな顔をさせたんだと、引きちぎられそうな後悔に襲われたのに、それでも我を張り通して、私は何を守ろうとしたのだろう。

何を手に出来たのだろう。

息をつかせる間もなく自分を責め立てる声に、耳を塞いでうずくまりたかった。

何が正解だったのだろう。
どうすればよかったのだろう。

(分からないよ)
それでもただ一つ感じていたのは、このままでは何もかも失うだろうという確かな予感だった。

こんな厄介な気持ちなら、恋なんて知らなければよかったのに。

頬杖をついて窓の外の空を見上げた小夜は、ほうと息を吐いた。

白く染まる窓ガラスに文字を書きながら、虚しくなって指を離す。

時折ふと感じるのだ。
それでも思いが全部を追い越すのが、人を好きになることなのかもしれないと。

(勇気、て…何だろう)

誰かのために振り絞る声を、大切な人のために差し出す手を、勇気と呼べるのなら。

踏み出す価値のある一歩が目の前にある。